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僕の猫舎

映画・小説(主にミステリ)の感想を綴るブログです。

ひらいたトランプ【感想】ーアガサ・クリスティ

ミステリ 小説 アガサ・クリスティ エルキュール・ポワロ

ブリッジは詳しくないけど、ハーツはよくしたなぁ

 

ひらいたトランプ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

ひらいたトランプ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

 

 

 

発表年:1936年

作者:アガサ・クリスティ

シリーズ:エルキュール・ポワロ13


簡潔に紹介するなら、魅力的なシチュエーションで起こる大胆な殺人事件を、ポワロを含む豪華な探偵たちが競演して推理し、独創的な手がかりによって辿りつく意外性のある犯人がミステリの見どころでしょうか。

こうやって見ると盛り沢山ですね。

 

本作にはトランプゲームの一つであるブリッジ(正式にはコントラクトブリッジ)が登場しますが、ただのトランプゲームではなく、ポワロが最大の手がかりと位置付けるほどの重要なキーワードの一つとなっています。

「ブリッジについて知らなくても楽しめるよ」という評もよく目にするのですが、「知っていれば尚面白い」と言う点は絶対に否定できません

そのため、別ページで超簡単にブリッジについて説明をするつもりですが、“百聞は一見に如かず”です。本来は4人でプレイするものなのですが、ルールを理解するためには一人でも良いと思います。お手元にトランプを用意して一度実際にプレイしながらルールと、なによりブリッジの醍醐味については知っておくと良いでしょう。

 

tsurezurenarumama.hatenablog.com

別記事で説明しきれなかったルールの一つに“切り札(トランプ)”があります。

基本的には強い数字を出せば勝てるブリッジですが、ゲーム開始前に“切り札(トランプ)”マークの一つが指定され、そのゲーム中は数字の強弱に関係なく指定されたマークが最強、というもの。

今作でも結構“切り札(トランプ)”を決める台詞が多々あり、数字+マークと言う具合に表記されています。例えばスリー・ハートとかフォー・ダイヤとかそんなのです(ノー・トランプはそのまんま切り札無)。

もちろんミステリに全く関係ないわけじゃないのですが、随所に散らばるゲームを再現する手がかりのひとつとなっています。

 

設定の提起から事件の発端までは簡潔明瞭でかなり解り易く、スムーズに進行するのであらすじは不要でしょう。どんどん読み進めて良いと思います。

事件後集まった4人の探偵たちは、いずれもクリスティの作品で複数回登場する人物なので、しっかりと把握しておきたいところ。

シリーズ探偵のポワロを筆頭に、『茶色の服の男』のレイス大佐、『チムニーズ館の秘密』のバトル警視、そして本作が初登場の女性推理小説作家アリアドニ・オリヴァ夫人の4人各自が個別に情報収集を行い、真相を究明していく形式になっています。

 

tsurezurenarumama.hatenablog.com

 

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残念なことにレイス大佐に関しては影が薄い気もするのですが、ポワロとバトル警視は、捜査方針こそ違えど、人間に対する洞察眼と推理力の高さは通じるものがあるような気がします。

そんな名探偵たちの中で、オリヴァ夫人の存在感はさらに際立ちます。ユーモアあふれる台詞の数々は、それだけでクリスティ作品の醍醐味がギュッと凝縮された濃厚なものです。そしてそんな彼女が引き出すのは、事件の解決の糸口だけではなく、登場人物たち、とくに女性の魅力。生き生きとしたクリスティらしいタッチで書かれる彼女たちの人間模様は、読んでいるだけで楽しく、ポワロという独特のキャラクターとの絡ませ方も巧みです。

 

さらに、二転三転する展開は、予想ができそうで…やっぱりできない。終わってみれば、いつも通りクリスティの掌でころころ転がされていたことに気付きます。

 

緻密で論理的な結末とは到底いかないものの、クリスティ作品の魅力である巧みなストーリーテリングと、時にアクロバティックで強引なトリックも十分味わえる印象深い一作でした。

 

 

では!