ミステリの魅力

   先日の記事で、究極のミステリの指標を示したが、それ以外のミステリはつまらない作品なのか、と聞かれれば全くそうではない。むしろ、多少アンフェアだったり齟齬があったりする作品ほど、感想を書いているとツッコミたくなったり、欠点の影に隠れた美点に気付いたりと、作品個々が持つ独特の面白さを発見することが多い。

 

   これから初めてミステリに挑戦する読者への拙いガイドラインとして、また、自身のミステリへの向き合い方を再確認するためにも、究極のミステリ以外の魅力を2つ挙げておこうと思う。

 

殺人

   物騒なワードが先行して申し訳ないのだが、ミステリでは必ずと言っていいほど事件が起こる。一口に事件と言っても、犯罪性のある窃盗や殺人から、全く犯罪性のない、不可思議な事象や心霊現象のようなものまで様々である。

   今回ミステリの魅力として取り上げるのは、事件の中でも最も悪意に満ち憎むべき犯罪である殺人だ。殺人は人が犯す最大の罪だと言って良いと思う。ところが恐ろしいことに、どんな重い罪でも明るみに出ない限りは罪には問われない。ミステリに登場する殺人者の多くは、利己的な考えから殺人を犯す。しかもそのためだけに時間を掛け、ばれないように念入りに計画を立て実行に移す。その多種多様なアプローチの方法と実行手法には驚嘆させられる。

   殺人描写を面白いなどと言っては不謹慎かつ命に対し不敬かもしれないが、人類平等に訪れる「死」がこうも複雑に、種々の状況と人間関係によってさまざまな方法で到来することを知ると、驚きと同時に強い興味が頭を擡げる。

   死を逃れる方法はあるのか。死を招く状況にはどんなものがあるか。そしてそれを回避する方法は?飛行機や列車での旅行中や、親戚との集まりで殺人のことを考えだしたら、あなたも立派なミステリファンだろう。

 

探偵

   探偵なしにもミステリは語れない。魅力的で個性的な探偵がどのような捜査方法で犯人を暴くのか。類似点はあったとしても、完全な一致はない数多の探偵たちの中から、いわゆる推しメンを探すのもミステリを読む魅力の一つだ。

   とはいえ、もやもやする点がなくもない。例えば、1900年代前半の2,30年だけでも、イギリスのスコットランド・ヤード(ロンドン警視庁)に在籍する警察探偵は、ざっと数えただけで20人はいる。それ以外にも腕利きの私立探偵が30人以上いるのだ。

   そんな彼らにレア度をつけ、ガチャで輩出し、5人一組でパーティを組み、クイズを解くことでパワーを溜め、攻撃コマンドで稀代の犯罪者たちを倒させたらどうか。時には、探偵同士で知恵の比べ合いを行い、ランキング形式にしてみるのも良い。イベントでは強敵モリアーティ教授が登場し、東大レベルの難問を吹っ掛けてくる。倒せばモリアーティ(善)☆5が味方になる。そんなゲームアプリが出れば私はやりたい。

 

では!