読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

僕の猫舎

映画・小説(主にミステリ)の感想を綴るブログです。

カナリヤ殺人事件【感想・雑記】ーS・S・ヴァン=ダイン

S・S・ヴァン=ダイン 小説 ミステリ


本作は1927年に書かれたヴァン・ダインによる長編推理小説第2作です。

 

カナリヤ殺人事件 (創元推理文庫 103-2)

カナリヤ殺人事件 (創元推理文庫 103-2)

 

 

 

また、ファイロ・ヴァンスを探偵に据えたシリーズものの2作目でもあります。

前作『ベンスン殺人事件』で心理分析による捜査法を実演して見せた彼ですが、それはいささか無理のあるものにも思えました。さらにワトスン役のヴァン=ダインの存在感の薄さも気になったところです。

まずは、あらすじ。

ブロードウェイで名を馳せた≪カナリヤ≫の愛称で知られる元女優が殺された。部屋が荒らされ、宝石類がなくなっていることからありきたりな強盗殺人事件かに思われたが、部屋の密室状態、目撃されずに消えた犯人の謎などから、事件は暗礁に乗り上げる。

 

冒頭から、物証を頭から信用しないヴァンスとマーカム地方検事の白熱した議論が交わされ、ヴァンスの心理的探偵法が全くブレていないことがよくわかります。

例えば指紋ひとつとってみても、不可解な場所で発見された正体不明の指紋があったからといって、その人物が犯人だと考えるのは短絡的です。ヴァンスは“ただそこに人がいた”という事実だけを見つめ、なぜそこにいたのか、なぜ指紋がついたのかを心理的に捜査していきます。この過程には読者もついてゆけるでしょう。

 

ただし、密室トリック、アリバイトリックに関して言えば、時代の古さは否めず、想像していたもの、また読者が期待していたものを得られるとは限りません。物証まで到達する心理的探偵法は良く書けているだけに、勿体ない気もします。

 

また、もう一つの点、ヴァン=ダインの存在感の薄さに関しては、私が気にしすぎたのかもしれません。目の前にぶら下げられた人参に食いつき、間違った推理に飛びつく警察心理的探偵法を駆使するヴァンスとの対比を、ワトスン役によってさらに混乱させるのは得策ではなかったのでしょう。むしろ、個人的推理を除外することでヴァンスの推理を邪魔せず、読者にありのままを伝えることに成功している、とも受け取れます。

 

 

そして本作において最も特筆すべきは、ポーカー・ゲームによる犯人の割り出しです。この点は賛否両論あるでしょうが、個人的にはこの洒落た展開には胸をときめかせるものがあります。

さらには、特殊な状況下で行われる

プロのイカサマ師によって仕組まれた

ポーカーにおいて、犯人にこちらの意図を図らせずに情報を収集することができる利点が効果的に思えます。

得た情報の成否は別として、推理小説にはブリッジやポーカーといったトランプゲームが多々登場するため、その相性も良く、ポーカー以外の方法での

ポーカーを拒否した

登場人物への調査も本質を捉えているようで、よくできていると感じます。

 

その反面トリックやポーカー・ゲームを除いても、犯人を示す手がかりは他にもあり、犯人が見えやすくなっている気もしますが、そんなマイナス面を補って余りある巧みなストーリーテリングで最後まで楽しく読み進めることができるでしょう。

次作以降にも大いに期待できます。

 

 

では!