僕の猫舎

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フランス白粉の謎【感想・雑記】ーエラリー・クイーン

本作は、1930年に発表されたエラリー・クイーンによる<国名シリーズ>の2作目です。

 

 

 

前作『ローマ帽子の謎』以上に魅力的な舞台、登場人物、豊富な謎が用意され、緊張感溢れる結末部もさることながら、トリック・キャラクター・プロット等の全てのバランスが取れたまさに“優等生”といった推理小説です。物語の分岐点も多く、登場人物同士の繋がりや背景などを考えると、ストーリーが縦横無尽に広がっていて楽しめるのですが、いくらか展開が多すぎるのか、全ての伏線を回収できていない感はあります。ただ、マイナス面はこれくらいで、その他は素晴らしい点ばかりなので早速本作の紹介といきましょう。

 

『ローマ帽子の謎』に引き続き、ほぼ全登場人物を網羅した登場人物目録に始まり、J・J・マック氏による序文、事件現場の見取り図、そして読者への挑戦状が堂々と提示されています。

事件の幕開けは、これ以上ないスリリングで奇抜な方法で行われ、緻密で整理された警察捜査から流れるようにエラリー・クイーンの捜査へと橋渡しがなされます。残された物証からは、作者によって作為的に用意された印象は全く受けず、犯人が“残さざるを得なかった”という必然性を違和感なく感じることができるでしょう。

 

普通の(何を普通とするかは曖昧ですが推理小説は、どことなく、犯人が最初から決まっていて、犯人を指し示す証拠が、恣意的に用意されている印象を受ける時があります。しかし本作では、作者でさえ、犯人を知らないのではないか?と思わせる程、作中の探偵たちの暗中模索な様子が描かれています。また、筋道立てて仮説が組み立てられ、一つ一つ真実に迫ってゆく過程も美しいと感じるほど整っており、全ての手がかりが示すたった一つの真実も、得心のゆく素晴らしいものです。

 

さらに、結末部の演出方法もまた洒落ており先鋭的な舞台装置から始まり、オニキスのブックエンドやオーダーメイドの煙草等、用いられる小道具すべてに趣向が凝らされているのもセンスの良さを感じる点です。しかし洒落た結末とは裏腹に、せっかくパズルのピースが揃いつつあるのに、少し強引すぎるきらいがあるのも事実で、冒頭で全ての物語を完結できなかったと評したとおり、まだ捜査を続ける余地もあったのではないかという疑問も残ります。

また、作者によるミスリードのうち何点かは、少々あざとさを感じる部分もあり、読み終わってみれば、全く不必要な描写もあったようななかったような

※合併話に反対する役員の件

 

犯人の意外性については、物証の一つから容易に想像がついてしまうのは残念な点ですが、かといってサプライズがないわけではなく、むしろ驚かされる確率の方が高いでしょう。

 

終盤は少し愚痴り気味になってしまいましたが、総合的に見てやはり良質なミステリであることに違いはありません。

間違いなく、前作よりパワーアップした純然たる本格ミステリを堪能できます。