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僕の猫舎

映画・小説(主にミステリ)の感想を綴るブログです。

救いの死【感想・雑記】ーミルワード・ケネディ

ご無沙汰です。

年度末のこの時期、どこもそうでしょうが忙殺されてます笑

本を読む時間は作れるんですが、文章におこすのが大変ですね^^;

でも、やっぱり残しておかないと、忘れちゃうので必死こいて書いてます。

 

 

本作は、1931年に発表されたミルワード・ケネディによる長編推理小説です。ケネディの華々しい経歴については、インターネット等でも容易に検索できることから省略するとして、イギリスの推理作家クラブであるディテクションクラブの初期メンバーとして、アントニイ・バークリーやカー、セイヤーズなどの名だたる作家たちとも交流があったことは書いておいた方が良いでしょうか。特に、セイヤーズからは当時の重要な推理作家として認められていたらしく彼女の編纂した短編小説集にケネディの作品だけ2作収録されていることからも想像できます。また、アントニイ・バークリーとは、【盟友】(という表現がどこまで信頼できるかは別として)の間柄だったそうで、この点は、本書の序文からも読み取れます。

 

この序文の中で注目しておいた方が良いと思われる点があったので紹介しておきましょう。

まず、「本書は『推理』を主題とした小説で、それ以外の要素はほとんどありません。」という部分。そしてもう一つが、「真相が明かされるかなり前に、読者はすでに結末を見越していることになるでしょう」という部分です。前者は、ロマンスやサスペンスといった要素を排除することで、謎の質やその解明に注視させる目的があるのかな?という程度の認識で読み始めたのですが、後者については、途中で真相がわかってしまってもそれも作者の意図の一つですよ。と言わんばかりの、どちらかというと「セコイな」という印象でした。結論から言うと、私は、上記の2つ両方において作者に見事に裏切られた結果になるのですが…

 

 

本書は、村の有力者エイマー氏が、謎の隣人モートンとかつての映画スターであるボウ・ビーヴァーが瓜二つであると、気づくところから始まります。独身で時間と金を持て余しているエイマー氏は、秘書や私立探偵を雇い、ボウ・ビーヴァーが人気絶頂で引退した謎と、隣人との関係を調査し始めるのですが…調査の過程で浮かび上がる、過去の殺人事件や事故がこの謎とどのように絡んでいるのか。エイマー氏は、集めた手がかりをもとに真相に少しずつ迫ってゆきます。ここで序文に書かれた一つ目の点「本書は『推理を』主題とした小説」が思い出されました。

そもそも本書は2部構成となっており、謎の発起と真相の解明までが書かれた第一部はエイマー氏の“手記”という形で読者に提供されるため、某有名作品を連想してどこか信用できません。しかし、謎の解明に関してのみ言及すれば、謎を解く手がかりは十分に読者に提供されており、少し想像力を働かせてみれば、エイマー氏と同じ水準で真相に辿りつくことができるのでしょうか。プロット・トリックともに大きな穴もなく、上質なミステリを堪能できるでしょう。ただ、『推理』以外の要素がなかったのか?と問われるとそうでもありません。(作者も「ほとんど」と言っているけど)例えば小さいが13章や14章、20章がそうかな?詳細は読んで確認してください。

 

続いて二部ですが、「別の視点」となっていることから、謎の解決が終幕ではないことは容易に想像できます。果たしてそれが、気になった2つ目の点「読者はすでに結末を見越していることになる」に繋がるのでしょうか。

一部を読み終えた時点で、ある程度の確証はあったのですが、正直“そんな結末”は見越してはいませんでした^^;予想外という意味ではなく、腑に落ちないという意味ですけど…

やはり、物語全体を見ると、序文のバークリーに宛てた“とされる”文章自体が、読者に対する先入観の刷り込みを目的としていたのではないか、と勘繰ってしまいます。つまり『救いの死』の根幹は、謎【ボウ・ビーヴァーの正体】とその結末【正体が明かされた後】ではなかったのです。実際には

謎は【エイマー氏の“手記”に隠され意図的に歪められた氏の内情と章を追うごとに剥がれていくメッキ】であり、結末は、【善悪の逆転に伴う氏の末路と探偵行為に対する皮肉】だったのではないでしょうか。


最後にタイトルについて。救いの死【Death to the Rescue】も、もしかすると“救済に至る殺人”という意味なのではないか?「to the」はもちろん方向性を指すし、「Rescue」は限定的に更正等の意味合いを持ちます。そしてその殺人は言わずもがな…翻訳の難しさと際どさを、ひしひしと感じる作品でもあります。

 

 

救いの死 (世界探偵小説全集)

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