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僕の猫舎

映画・小説(主にミステリ)の感想を綴るブログです。

青列車の秘密【感想・雑記】ーアガサ・クリスティ

アガサ・クリスティ 小説 ミステリ エルキュール・ポワロ
日本で「青」という色の付く単語には、「緑」を意味するものも少なくありません。

青信号を筆頭に、青虫や青葉など実際に緑なのに「青」を使っちゃう日本人に対して、外国人も疑問に思っているそうですが、肝心の我々がその理由をしらないので、聞かれても困ります。

ちなみにその他の、緑を青と言っちゃってる事例で、1番マイナーなのは、「青竹」説が有力ですが、どうでしょう?

えーっと横道に逸れすぎましたが、今作はしっかりと「青い」のでご心配なく。 今作は、1928年に発表されたアガサ・クリスティの長編小説第8作、ポワロシリーズでは第5作目にあたる作品です。タイトルの「青列車」とは、もちろん本事件の舞台となる寝台列車【仏:トラン・ブルー(作中ではブルー・トレイン)】のことですが、クリスティの名作『オリエント急行の殺人』と同じようなクローズド・サークルの要素は全くありません。

犯人の意外性については、特筆すべきところはなく、ストーリーの展開もロマンスが中心となっているため、全体的に悪く言えばボンヤリとした、良く言えば尖ってない?作品に仕上がっています。

原因はやはり、せっかく魅力的な【青列車】が舞台であるにも拘らず、その描写・登場回数が少ないこと、タイトルとの大きなギャップが要因ではないでしょうか。タイトルが『グレーの瞳』だったらもう少し評価は高かったかもしれませ……いや、それはいささか傲慢かな。

一方、高評価されるべき点も挙げておきます。クリスティ作品にはどれも、魅力的な登場人物たちが存在しますが、本作ではミス・グレー、レノックス、そしてジアです。彼女たち3人のうち2人は33歳で未婚、レノックスはミス・グレーと年が離れているらしいので、20代前半か18,19くらいかな?彼女たちは、生まれ育った環境こそ違えど、同じように誰かを愛し、また愛されることを望んでいます。しかし作中に登場する男どもは、揃いも揃ってギャンブル狂で能天気で、頭の足りない男ばかり。やはり彼女たちの心を導くのはパパ・ポワロを措いて他にはいません。くれぐれも言っておきますが、ポワロの恋愛小説ではありません。かといってポワロの『灰色の脳細胞』というワードすら出てこない本作は、純粋な本格推理小説というわけでもなさそうです。

<火の心臓>と呼ばれる稀代のルビーが象徴する赤、青列車の青、ミス・グレーの灰、ポワロのグリーンの瞳、様々な色が溶け合い、本作は造形されています。もう少し挿し色があっても良かったかな?

余談ですが、青列車の車掌、ピエール・ミシェルってあの人でしょうか?いやあの人だ。やはり「人生は汽車」なのだ、と思い知らされます。

では!